シャインマスカットの価格変動・気象リスクに負けない果樹経営へ。売上ではなく「手取り」を残すための考え方
はじめに|果樹経営で本当に見るべき数字は「売上」ではなく「最後に残るもの」
シャインマスカットをはじめとした高品質な果樹は、多くの農家にとって重要な収益品目です。
一方で近年は、栽培面積の拡大による販売環境の変化、資材価格の上昇、霜害や雹害などの気象リスクによって、果樹経営の判断は以前より難しくなっています。
シャインマスカットのような高品質果実の生産は全国で広がり、消費者ニーズに対応した品種として普及が進んできました。
しかし、これからの果樹経営で重要なのは、
「どれだけ売上を作ったか」だけではありません。
大切なのは、
- 販売後にどれだけ手元にお金が残るか
- そのためにどれだけ時間を使っているか
- その仕事が今後の経営の余白につながるか
という視点です。
株式会社百一姓では、農家経営を考える際に「売上最大化」ではなく、「手取り・キャッシュ・時間・経営の余白を増やすこと」を重視しています。
今回は、果樹経営を取り巻く変化と、これから農家が見るべき数字の考え方について解説します。
果樹経営を取り巻く環境は大きく変化している
「良いものを作れば売れる」だけではなくなった時代
シャインマスカットは、皮ごと食べられる食べやすさや高い品質が評価され、全国で生産が広がってきた品種です。
しかし、生産者が増え、販売方法も多様化する中で、単純に「作った量を出荷する」だけではなく、
- どの商品を作るか
- どの販売先を選ぶか
- どこに時間をかけるか
という経営判断が重要になっています。
同じ1房の果実でも、
市場出荷するのか、
直売するのか、
ギフト販売するのか、
によって、販売価格だけでなく必要な作業や経費も変わります。
つまり、これからの果樹経営では、
「高く売れる方法を探す」だけではなく、
「販売後に何がどれだけ残るのかを見る」ことが重要になります。
気象リスクによって「作れば売れる」経営は難しくなっている
果樹経営では、販売環境だけではなく自然条件への対応も大きな課題です。
例えば、
- 春先の凍霜害
- 開花期の天候不順
- 夏場の雹害
- 高温による品質への影響
などによって、予定していた品質や販売計画が変わることがあります。
果樹は、苗木の育成や園地管理など長い期間をかけて商品を作るため、最後の販売段階だけでなく、年間を通した経営判断が必要になります。
そのため、「収穫できたものはすべて販売する」
という考え方だけではなく、
「収穫・選果・販売まで含めた時に、本当に経営にプラスになるのか」を見る必要があります。
果樹農家が抱える3つの経営課題
課題①|売上が増えても手取りが増えるとは限らない
果樹経営でよくある悩みの一つが、
「売上はあるのに、お金が残らない」という問題です。
その理由は、売上と手取りは同じではないからです。
例えば、果実を1箱販売する場合には、
- 箱
- 梱包資材
- 送料
- 販売手数料
- 決済手数料
など、販売数量に連動しやすい原価総額が発生します。
一方で、
- 肥料
- 農薬
- 園地管理費
- 剪定、防除などの作業
は、出荷箱数だけに単純比例するものではありません。
作付面積や作型、生育状況などによって変わるため、
「出荷数が増えたから、すべての費用が同じ割合で増える」
と考えるのは適切ではありません。
重要なのは、「出荷量を増やすべきか」
ではなく、
「あと1箱販売した時に、本当に粗利総額が増えるのか」
を見ることです。
百一姓では、追加で1箱・1件・1時間を投入した時に、
- 追加売上はいくらか
- 追加で発生する原価総額はいくらか
- 必要な労働時間はいくらか
- その時間を別の重要な仕事に使えないか
を確認します。
課題②|直売や加工は「単価が高い=利益が増える」ではない
販売方法を変えることは、経営改善の選択肢の一つです。
例えば直売では、市場出荷より販売価格を高く設定できる場合があります。
しかし、直売には、
- 注文対応
- 個別梱包
- 発送作業
- 決済管理
- 顧客対応
- 販促活動
など、新たな仕事も発生します。
また、規格外品を加工する場合も、「捨てるより売った方が良い」とは限りません。
加工には、
- 加工費
- 容器やラベル
- 保管
- 販売活動
- 作業時間
が必要になります。
大切なのは、「売価が高いか」ではなく、
原価総額や必要時間を踏まえたうえで、どれだけ粗利総額が残るのか。その結果として、手元資金や経営の余白につながるのかで判断することです。
課題③|設備投資や規模拡大は「利益」と「資金繰り」を分けて考える
果樹経営では、安定生産や作業効率化のために設備投資が必要になる場面があります。
例えば、
- 防霜設備
- 園地設備
- 選果・出荷設備
- 作業機械
- 改植
などです。
しかし、設備投資を判断するときに注意したいのは、
「良い設備だから導入する」ではなく、
その投資によって、経営に何が残るのかを見ることです。
設備投資では、
- 利益がどれだけ増えるのか
- 作業時間がどれだけ減るのか
- 年間の返済を含めても資金繰りが回るのか
を分けて考える必要があります。
特に注意したいのが、減価償却費と借入返済を同じものとして扱わないことです。
減価償却費は会計上の費用ですが、必ずしもその年に現金が出ていくものではありません。
一方で、借入元本の返済は会計上の費用ではありませんが、実際には現金が出ていきます。
つまり、
「利益が出ているか」と「手元資金が残っているか」
は別々に確認する必要があります。
設備投資は、単純に規模を拡大するためではなく、
「経営者の時間を生み出せるか」
「将来の粗利総額を増やせるか」
「資金繰りを維持できるか」
という視点で判断することが重要です。
粗利総額と手取りを守る果樹経営へ
百一姓では、果樹農家の経営改善を考える際、まず「売上を増やす方法」から考えるのではなく、
- どの商品がどれだけ粗利総額を生んでいるか
- その販売方法にどれだけ作業時間が必要か
- 最終的に手元資金が残る仕組みになっているか
を確認します。
例えば、同じ1箱の販売でも、市場出荷、直売、EC、ギフトでは必要な作業や販売経費が異なります。
そのため、販売単価だけを見るのではなく、
「その販売方法を続けた時に、農家本人のお金と時間が残るか」
という視点で判断します。
ステップ1
まず「1箱あたり何が残るか」を見える化する
果樹経営を改善する第一歩は、自社の数字を把握することです。
見るべきなのは、単純な販売単価ではありません。
例えば1箱販売する場合、
- 販売価格
- 箱や梱包資材
- 送料
- 販売手数料
- 決済費用
- 発送や対応にかかる時間
などを整理します。
ここで大切なのは、
「一番高く売れる方法を探す」
ことではありません。
販売方法ごとに、
どれだけ粗利総額が残るのか
どれだけ時間が必要なのか
を比較することです。
市場出荷、JA出荷、直売所、EC、ギフト販売など、それぞれにメリットと負担があります。
どの方法が正解かではなく、その農家の規模・人員・目的に合っているかを見ることが重要です。
ステップ2
「あと1箱やる価値があるか」で判断する
果樹経営では、収穫できるものをすべて収穫し、すべて販売することが正解とは限りません。
例えば、
「あと1箱出荷できる」
という状況でも、
- 収穫作業
- 選果
- 梱包
- 販売対応
- 配送準備
まで含めると、その1箱のために大きな時間が必要になる場合があります。
その時間を使うことで、
- 来年に向けた園地管理
- 営業活動
- 販売先づくり
- 家族との時間
を失っている可能性もあります。
百一姓では、農家本人の時間も重要な経営資源として考えます。
売上が増えても、忙しさだけが増えて経営者の余白がなくなるのであれば、長期的に良い経営とは言えません。
ステップ3
「やめる判断」を持つ
経営改善というと、
- 新しい販売方法を始める
- 新しい商品を作る
- 生産量を増やす
という方向に目が向きがちです。
しかし、場合によっては、
「やめること」も大切な改善策になります。
例えば、
- 手間に対して粗利総額が少ない作業
- 繁忙期の負担が大きすぎる販売方法
- 採算が合わない加工
などです。
「売れるものは全部売る」
「収穫できるものは全部収穫する」
ではなく、
限られた時間と資金を、どこに使うべきか
を考えることが経営判断になります。
資料でも、売上を増やしても追加労働や在庫、資金回収まで含めると経営者の手取りや時間を減らす場合があるため、最終的なメリットで判断することが重要とされています。
よくある質問(Q&A)
Q1. シャインマスカットの販売単価が下がった場合、直売へ切り替えれば改善できますか?
A.直売が有効な場合もありますが、「直売だから利益が増える」とは限りません。
販売価格だけではなく、
- 梱包
- 発送
- 顧客対応
- 販促
- 管理時間
まで含めて、最終的に粗利総額や手取りが増えるかを見る必要があります。
Q2. 規格外品は加工して販売した方が良いですか?
A.加工は選択肢の一つですが、必ず利益改善につながるわけではありません。
加工費、容器、在庫、販売活動、作業時間まで含めて判断することが重要です。
「売れるからやる」ではなく、「経営に何が残るか」で考えます。
Q3. 防霜設備などの投資判断は、何を基準に考えればよいですか?
A.投資によって増える利益と、投資後の資金繰りの両方を見る必要があります。
設備導入によって品質向上や作業改善が期待できても、返済によって資金繰りが苦しくなれば経営負担になります。
利益とキャッシュを分けて判断することが大切です。
まとめ|果樹経営は「売上最大化」から「手取りを残す経営」へ
果樹経営では、売上を増やすことだけを目標にすると、本当に大切なものを見落とすことがあります。
重要なのは、
- どれだけ売れたか
- どれだけ作ったか
だけではありません。
見るべきなのは、
- どれだけ手元に残るか
- どれだけ時間を確保できるか
- その仕事を続けることで経営の余白が生まれるか
です。
シャインマスカットなど果樹経営を取り巻く環境が変化する中で、これから必要になるのは「量を増やす経営」だけではなく、「残るものを増やす経営」です。
株式会社百一姓では、決算書の数字だけでは見えにくい、農家ごとの手取り・キャッシュ・時間を整理し、現場で使える経営判断をサポートしています。
「売上はあるのにお金が残らない」
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